導入時の課題を明確にすることで効率の良い在宅勤務を可能にするテレワークは、企業による人材確保と就労者のワークライフバランス達成が可能となり、双方にメリットのある働き方です。
テレワークを活用する企業は年を追うごとに増加しており、特にここ最近の新型コロナ感染症による緊急事態宣言を受け、さらにテレワークを活用する企業が増えています。
IT Media Newsによれば、特に感染症が問題になり始めた3月初旬から、1ヶ月後の4月初旬に至るまでの間にテレワーク活用企業は増加。なんと3月以前の2倍にものぼるそうです。
特に顕著な増加を見せている地域は東京・大阪・名古屋といった人が集まる都会になりますが、緊急事態宣言の対象が全国に広がったことから、地方都市でも導入の流れが着々と進んでいることが伺えます。
大手企業のテレワーク導入事例はニュースなどでよく目にすることがあります。しかし、地方にある中小企業ではテレワークに対してどのように取り組み、導入を行なっているのでしょうか。
近年、地方企業でも取り組みが活発になっているテレワーク活用事例をご紹介します。
地方企業のテレワーク活用事例①: 株式会社キャタラー (製造業/静岡)
静岡県で製造業を営む株式会社キャタラー。
当初は、製造業でテレワークを導入できる職種は皆無であると考えられていたそうです。
しかし、国内での事業拡大に伴い「場所にとらわれない働き方」を模索する必要性が出てきたため、テレワークによる在宅勤務を検討するようになりました。その目的は、時短勤務を行う社員が帰宅後、在宅勤務という柔軟な働き方を実現しつつ生産性を向上させる。また、育児や介護によって働き方が制限されている能力のある人材を確保するというものです。
- テレワークへの取り組みの課題
テレワーク導入時の課題として、株式会社キャタラーでは在宅勤務のルールなどの運用制度が整理できていなかったことを挙げています。
- テレワークの進め方
・テレワークの形態は主にモバイルワークと在宅勤務。
・実施はテレワークをする理由がある社員に限定し、半日の在宅を含む週2日で取り組みを開始。
・通常の勤務と同じ時間制とし、在宅勤務開始は所定の方法で上司に申請し承認。
・VPN接続によるセキュリティの確保によって、在宅勤務者は自宅に居ながら社内にある自分のパソコンを操作可能にする。勤怠管理は自宅からもできるようにし、他の社員とのコミュニケーションを確立するためのツールも導入。
- テレワーク導入後の効果
・テレワークをより理解するための説明会を開催することで、テレワーク申請に関する条件や在宅勤務中における労災について、また使用するツールの活用法などについても多くの意見交換が行われ、期待値の高い取り組みとなった。
・テレワーク実施以前に比べ、手掛ける業務に対する効率のアップと就労者の生活充実度に高評価が得られるようになった。
- 今後の課題
・テレワーク制度を導入することで、社員の反応や業務にどのような影響が出るのかさらなる検討が必要である。
・在宅勤務の働き過ぎなどを考慮した規定整備が必要。
地方企業のテレワーク活用事例②: 日本セテック株式会社 (製造業/富山)
テレワークへの取り組みを、”人材の活用”に大きく貢献する仕組みであると定義する日本セテック株式会社。
会議に掛かるコスト・労力の削減と仕事の効率化を目的としたテレビ会議の導入と、人材確保のためにテレワークを導入しました。
主に遠方から出勤する女性社員の産前休業と育児休業時に、大きな負担とならない程度で在宅勤務を取り入れることで、人材の確保・活用に役立てています。
また、そのような状況の社員が会社に復帰後、一定期間は在宅勤務を活用できるようにする制度も検討。積極的なテレワーク導入に取り組み始めています。
- テレワークへの取り組みの課題
テレワークで出来る業務が限られているという点がひとつの課題となっていたようです。その他にも、在宅勤務中の勤怠管理と評価システムといった、テレワークに関するルール決めも課題として取り上げられています。
- テレワークの進め方
・在宅勤務という環境でも能動的に作業を行うことが出来る技術部・勤務社労士に限ってテレワークを実施。技術部社員はソフト・ハードに関する設計や部材の選定業務を、社労士は社労士業務をテレワークで行う。
・テレワーク実施日数には制限を設けず、光熱費などの補助はしないものの、出勤者と同等の交通費による支援を実施。
・在宅勤務者の評価や賃金に関すること、昇進についてはこれまでと同じシステムを採用。
・在宅勤務の開始にあたっては、技術部社員は在宅勤務表への記入と、技術部部長への口頭による申請で承認を得てから管理部長へ報告。その他の社員は業務内容を管理部長へ報告し、承認を得る。
- テレワーク導入後の効果
・育児などを理由に退職を希望していた社員が、在宅勤務を可能にすることで継続することが出来るようになった。
・今後も育児や介護で在宅勤務を希望する社員もおり、テレワークの仕組みが活用出来ると考えている。ワークライフバランスの実現も可能になっている。
・雇用継続が可能になることで、仮に新入社員をさらに雇用し、3年間を育成に費やすと考えると、約600万円の人件費を削減できると推測される。
・ICTを活用したテレビ会議によって、日本全国の主要都市や海外での会議開催に掛かる移動費などを含むコスト(年間700万円)を削減。
- 今後の課題
・テレワーカーに対する人事評価が難しく、在宅勤務者の評価を正確に反映することが出来る評価方法の導入が課題。
地方企業のテレワーク活用事例③: プラテック株式会社 (医療福祉/福島)
テレワークの2大効果とも言える、就労者のワークライフバランスの実現と生産性の向上を目指すプラテック株式会社によるテレワークへの取り組み。
育児などを理由に時短勤務を希望する介護施設職員が働きやすくなること、IT技術を活用した生産性の向上といったメリットを見据えた上でテレワークの導入を開始しています。
- テレワークへの取り組みの課題
プラテック株式会社はテレワーク導入の際に、”導入目的”と”基本方針”を確認する中で多くの課題を見出しました。
・資料のペーパーレス化や情報共有を行うためのシステム構築
・セキュリティに関する課題
・就業規則と勤務規程
・在宅勤務におけるルール策定
これらが大きな課題となっていたようです。
- テレワークの進め方
・報告書類など、本来紙ベースであった書類はペーパーレス化し、在宅勤務者の情報共有の仕組みや制度、マネジメント方法について検討。
・会社が支給するパソコンを在宅勤務で利用し、テレワークを行う際はセキュリティを考慮し、システムへのログインは二段階認証を採用する。
・テレワーク開始は上長の承認を得ることを必須とする。
・テレワーク時の賃金・昇進などの評価方法は、通常勤務と差異が生まれないようにする。
・労働時間等の勤怠管理はメールを利用。将来的には専用ツールを導入する。
- テレワーク導入による効果
・就労者のワークライフバランスが向上。今後週一回のテレワークによって、職員が家族と過ごす時間が増えると予測される。
- 今後の課題
・テレワークの運用ルールを確立し、社員教育も必要。
・社内におけるテレワークの認知を徹底することと、現場のニーズを確認していくことも課題となった。
地方企業が取り入れるテレワークにおける効果や課題の例を参考にしよう
すでに多くの大手企業が導入し、首都圏や地方の中小企業でも導入が開始されているテレワーク。
業種や職種を問わず、どのようにテレワークを導入するかによって各企業のメリットが大きくなるケースや、さらなる課題が見つかるケースなど、様々な結果が想定されています。
しかし、事例を参考にすると、資料のペーパーレス化や情報共有やコミュニケーションを図るためのツールの導入、ネットワークセキュリティの確立や勤怠管理を工夫するといった、テレワーク導入に関わる多くの課題を解決することができそうです。
どの企業も在宅勤務の評価方法について”課題”と考えている点も、テレワーク導入で必ず検討すべきポイントになると予測されます。
地方企業が取り入れるテレワークにおける効果や課題の例を参考にし、テレワークの導入を推進しましょう。
※各企業の紹介で使用している画像はイメージです。
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