みずみずしく育つ西条の”アムスメロン”を支える

年々、各地で就労人口が減少している農業。生産者の高齢化も進む一方で、新規就農を行う若者世代のチャレンジも目立ちます。愛媛県西条市でアムスメロンの栽培に携わる櫛部朋哉(くしべ ともや)さんもそのひとりです。

愛媛を代表するアムスメロンの育生に強い使命感を持って取り組む櫛部さんに、就農してみて感じることや今後の展望など、様々なお話を伺いました。

”若い力”と”農家の知恵”が育てる、甘くて美味しいメロン

kushibe_meron02

西条市の名水が育む果物には、甘くて美味しいイチゴやキウイなどがありますが、アムスメロンもまた、人気の高い果物のひとつです。櫛部さんは今、アムスメロンの栽培に携わる23歳。

「3年前に就農して、メロンに関しては去年から作り出しました。」(※ 2020年6月時点)

最初の1年目は、ネギの栽培に携わっていたという櫛部さん。昨年、かねてから栽培していたネギに加えて初めてアムスメロンを育生・収穫し、今年は2回目の収穫になるとのこと。全部で380坪の面積でアムスメロンなどを栽培しているそうです。難しいと言われているメロンの栽培ですが、就農3年目にしてメロンを手掛けるというところにセンスの良さが光ります。

「農業大学では、自分が手掛ける作物を選ぶことができたので、メロンの研究を行っていました。最終段階の卒業論文を提出する時に、作ってみたら結構良いものができたんですよ。僕が暮らす周桑(しゅうそう)という土地は、アムスメロンの栽培が盛んで有名でしたので、土地柄にも合っていると考えてアムスメロンの栽培を始めました。」

櫛部さんは今、さらにより良いメロンを栽培するために、ベテランのメロン農家さんからもアドバイスを受けているそうです。櫛部さんが栽培するメロンには、ご自身の若い力と長年メロン栽培に携わってきた農家さんたちの知恵と経験が活かされています。

”農業に携わりたい”という想いが現実を動かす

kushibe_meron03

23歳という若さで、難しいと言われているメロン栽培に取り組む櫛部さん。現在に至るまでの経緯について伺いました。

「農業を始めたきっかけですが、僕は物心ついた頃から農業の手伝いをしていました。最初は農業機械に興味があったんです。でも、やっぱり農業を手伝っていくうちに、作物を作ることが面白いなと思い始めました。」

長年農業に携わっている父親を、幼い頃から手伝ってきた櫛部さんですが、実は農家を継ぐという義務感から農業を始めたのではなく、自ら望んで農業に携わることを決めたそう。

「愛媛県にある農業大学校に通いました。そこでは僕のように、学校卒業後は将来的に農業をするという人が沢山居ました。」

「大学では友達とよく遊び、横の繋がりが沢山できました。大学を卒業してから農業をやることになり、自分がやらなければならない状況になってから真面目に勉強し始めましたね。今でも他の地域でみかん作りをしている友人と、仕事の話題や情報の共有をしています。」

大学時代の友人たちとは今でも繋がっており、お互いに農業に関する情報共有を行っているそうです。

「将来、”自分で農業をやりたいなぁ”というのはずっと思っていて、大学を卒業して就職するか、農業を自分でやるかで迷ったんですが、”どうせやるなら若いうちからやろう”と思い、自分で農業を始めることにしました。」

農業を始めることを決意した櫛部さんでしたが、当初は経験者である父親から大反対を受けたそうです。その反対理由は、経営の難しさ。知識や経験を蓄えても、多くの農業経営が常に天候などの不可抗力に左右されます。その外部環境に左右される苦しさなどを身をもって経験してきたからこその、大反対だったようです。しかし、櫛部さんが就農を決意したタイミングに転機が訪れます。父親の友人である農家さんが事情により農業から撤退したこと、そしてその土地を農地として使ってほしいという依頼もあって、農業に携わるための土台が出来上がったと言います。

自らが農業を手掛けたいという意思を貫いた櫛部さんですが、その想いに呼応するかのようにあらゆる環境が整い、櫛部さんは就農するに至ったのです。

手間と時間を掛けて美味しくなる”メロンづくり”

kushibe_meron04

「やっぱり毎日気にかけて、気にかけて、気が抜けませんね。まだメロンづくりを始めて3年目なので、基本的に毎日大変です。でも、毎日手をかけることで良いメロンができるというのは、実感してきましたね。」

繊細な管理と手入れによって成長し、美味しさを増していくアムスメロン。3年目と言えど、全く気が抜けないと言います。

kushibe_meron05

「当然、温度管理や空気の入れ替えを毎日行わなければなりません。そして水の管理。もし、メロンに虫がついたら駆除や防御など、全部気にかけないといけません。それらは毎日の事ですから、そこは大変な部分ではありますね。」

毎日生育するメロンを気にかけ、あらゆる手間を掛けなければならないメロンの栽培。旅行や遊びにも出掛けたい年頃ですし、何より休みの日も欲しいところ。しかし、実際には丸一日休める日は無いと言います。

「やはり仕事優先にしないと、メロンはどうしようもないんですよね。」

「そうしなければ、良いものは出来ないと分かっています。休みを取ったらその分だけ、あとから倍になって手間が返ってくるということがあります。確かに大変なんですが、それが辛いというわけではありません。自分でやると決めて、やっているわけですからね。」

メロンの栽培を始めたことに、櫛部さんは後悔はないと言います。そこで、もし、櫛部さんのような若い人が農業を手掛けたいと相談してきたら、櫛部さんはどのように答えますか?と伺ってみました。

「反対はしないと思うんですよ、僕は。自分がやりたいことをやるなら、良いと思います。僕はそれで後悔していません。それこそ、誰かが西条で農業を始めてくれるなら良いと思いますね。」

覚悟と潔さを持ってアムスメロンづくりに取り組む櫛部さん。続けて、高齢化が進む西条の農業に対する想いも語っていただきました。

将来の”西条の農業”を考えて。農地はさらに拡大する

kushibe_meron06

「そうですね。もっと自分自身の農業に対する基盤が出来てから、”若いけど農業を頑張っている”というアピールをしていきたいと思っています。」

櫛部さんは、若い人が農業を頑張っていると知られていくことが、西条市の農業に良い影響を与えると考えています。現在、西条市では高齢化によってメロン農家の離農が続いており、農家自体も減っているため、メロンの生産量が落ちていると言います。

しかし、もともと人気があるため、地元の中だけでも供給が追いつかないというアムスメロン。旬の時期は5月から7月頃までと言われています。地元の人は、今年も行列を作ってアムスメロンを買い求めるほど。

「規模は拡大したいと考えています。来年もメロンを増やす予定にしています。」

農業に携わる人々の高齢化と、美味しいアムスメロンをつくるために掛かる手間が、生産量の減少に繋がっていると考える櫛部さん。将来的には、農地と農産物の種類の拡大も考えているそう。

「多分これからは後継者不足によって、農業を誰かにやってもらわざるを得ない状況になってくると思います。地域には若い人が少ないですから、土地を使って農業をやってほしいという状態になった時、その土地の規模に応じた作物を拡大していけたらと思っています。」

若い世代の挑戦によって徐々に、確実に盛り上がりを見せる西条市の農業。櫛部さんの農業をやっていくという強い想い、そして地に足の付いた言動や行動、アイデアは、今後の西条市の農業発展に大きく寄与していくことでしょう。