チャンスを与えてくれる西条市で、愛する”限界集落”を守る

西条市で地域活性化に取り組む田村祐太郎(たむら ゆうたろう)さんは、現在25歳。消滅可能性都市の先駆けとなる”限界集落”の魅力を見出しながら、地域の課題解決に注力しています。その活動に至った背景には、田村さんが生まれ育った環境や、限界集落の人々との触れ合いによって感化された経験が大きく影響しているそう。そんな田村さんに、現在の活動やこれまでの経緯、さらには西条市について、実際に感じたことや今後やっていきたいことなどを伺いました。

”3つの事業”で限界集落の課題に挑む

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”限界集落”とは、少子化や過疎化によって人口が著しく減少し、人口の5割が65歳以上、社会的生活や活動の維持が困難になっている集落のことを指しています。昭和30年代、田村さんが暮らす集落は鉱山や林業で潤っており、当時はなんと4,000人を超える人々が暮らしていたとのこと。しかし、集落の過疎化により現在は200人以下まで縮小してしまったそうです。

「世の中、勿体無いものだらけだと僕は思ってます。」

消費社会の爪痕が色濃く残る現代において、”足るを知る”という言葉を文字通り体現する田村さんは、限界集落という地域で複数の事業を展開し、地域を盛り上げる活動を行っています。まずは、田村さんに現在の活動について伺いました。

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「そうですね、僕は今3つの事業をやっています。”ふれあいの里の運営管理”と、”空き家の活用事業”、あと、学生さんにこの場所に来てもらって、こんな人生もあるんだよ的な事を伝える”研修事業”ですね。」

豊富なアイデアと行動力で事業を展開する田村さんは、施設の運営管理を通して地域と繋がりつつ、その地に眠る空き家の借用や購入を行っています。さらに、これらの場所を首都圏から訪れる学生への研修事業にも活用。多感な時期を過ごす学生たちに、限界集落の良さを感じてほしいという想いがあるそうです。

自然の豊富さに魅力を感じて都会などから足を運んでくれる人も多く、住みたいとさえ考える人もいるとのこと。田村さんが3つの事業を行う根底には、自らが気づいた”限界集落の課題”があると言います。

「せっかく良いものが眠ってる土地なのに、それが全然外に開かれていません。オープンになっていないため、誰もアクセスできないという状態になってるのが勿体ないですね。それがこの地域だけでなく、日本の限界集落の課題なのではと思います。それを解決できれば、この地域に限らず、限界集落も無くならずに済むんじゃないかなと思っています。」

ニーズがあるにも関わらず、衰退していく集落。集落の沢山の魅力とは裏腹に、閉鎖的な体質こそが解決すべき課題なのではと語ってくれました。そんな田村さんですが、現在の活動に至るまでにはどのようなストーリーがあったのでしょうか。

世間体をも跳ね除ける”限界集落を大事にしたい”という想い

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「僕、新潟県の新潟市出身なんです。旧新津市という所で、家の周りは基本的に田んぼです。一見田舎なので、ちゃんとした文化の残る地域に生まれたのかと思いきや、田んぼを埋め立てて作られた新興住宅地に生まれたんです。」

新興住宅地に生まれ育ったという田村さん。そこには田舎ならではのお祭りといった地域行事も特に無く、隣人とは挨拶を交わす程度。ベッドタウンで過ごした高校・大学時代の部活ではバスケットボールに熱中していたそうですが、次第に物足りなさを感じ始めたそうです。

「大学は、部活だけではつまらないというのがありました。せっかくなので、子供の時も田んぼの中で遊んでたし、自然が好きだった事もあったので、自然のある所に旅でもしてみようと思い立ちました。自転車で旅をしたり、また自然関係のゼミに入っていたこともあり、研究も限界集落などを対象にしていました。」

自分が好きな”自然”に触れるという活動の中で、ゼミでの研究対象であった新潟県・粟島浦村での1ヶ月間の滞在を経験し、限界集落の魅力に触れることになります。

「一番無くなろうとしている最前線の集落の人と結構密に関わってみて、話を聞いたりした時に、初めてそこで”ちゃんと土地を大事にする文化”っていうか、そういう想いがあるのが凄く羨ましく感じたんですよ。」

「僕が生まれ育った地域は新興住宅地だったので、凄く良いなって思いました。”これこそ日本じゃん”って。そこからすごく強烈に、一番なくなりそうな地域、限界集落に凄く惹かれるようになりましたね。」

そんな田村さんは、限界集落に触れることで大きなチャンスを見出します。

「いろんな人達に喜ばれているものがすでにあるのに、もう跡継ぎがいないからという理由だけで事業をたたむという人がすごく多くて。すでに成り立ってるものがあるのに、それがどんどん無くなってくのは本当に勿体ない事ですが、自分にとってはチャンスだと考えました。」

限界集落にすでに存在する魅力に勝機を見出していた田村さん。しかし、限界集落と関わっていきたいという想いを抱きつつも、一度東京の会社に就職する道を選択します。

「一旦社会の流れに乗ろうと思い、就職しました。その会社は不動産投資会社で、要はお金持ちの資産を増やすという仕事でした。”限界集落に行きたい”と思っている自分とは真逆の仕事という事もあり、もやもやとした気持ちで働いていましたね。」

当時、いわゆる世間体を気にしていた自分を発見したという田村さん。会社に1年間勤務した後に退職すること決め、ずっと探し求めていた限界集落との関わりしろを発見することになります。

NCLの説明会で掴んだ、愛媛県西条市の限界集落への道筋

各分野で活躍する人材によって構成されており、地域活動を通して新たな社会の在り方を議論・実行する場となっているネクスト・コモンズ・ラボ(NCL)。田村さんは、在職中に出会ったネクスト・コモンズ・ラボ(NCL)をきっかけに、西条市という地域に関わる機会を掴むことになります。

「不動産業界には結局丸1年いたんですが、12月ぐらいにNCLを見つけて説明会に行きました。」

NCLの説明会に足を運んだという田村さん。限界集落というキーワード、そして自身がやりたいと思うことを相談する中で、現在までの道筋が出来上がったそうです。

「NCL全体の説明会だったのですが、限界集落に行って宿などをやりたいです、と言ったら、こういう話があるよっていうのを紹介してもらいました。実際、現地には12月に行き面接を受け、3月ぐらいに決まって、4月から住み始めたという感じですね。」

それ以来、自らの事業活動を行いながら西条市で生活する田村さんですが、実際に移住して、どのような暮らしを送っているのでしょうか。

自然に触れ、限界集落を開拓していく楽しさ

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大好きな自然と向き合う生活。田村さんは、山の斜面に位置する美しい森の中を拠点に生活しているそうです。登山や山菜採りに、たけのこ狩り。そして川遊びが何より楽しいと田村さんは言います。

「都会に暮らすなら、都会に合わせてちゃんと生活すると思うんですけど、今は向こう10年ぐらいは都会に戻ろうとは思わないですね。」

今では、都市に住む家族や子供を自然の中で遊ばせたいというニーズと、自らが暮らす自然環境が重なり、新たな事業展開も見えてきているのだとか。一つのことに熱中し開拓することが好きという田村さんには休日という概念も無く、限界集落をゲーム感覚で開拓していくことが最も楽しいそう。

「僕は全くスローライフじゃないと思っています。基本起きているときはずっと作業をしていますし、スローにしてる時はあんまりないですね。」

活発に活動し、いわゆる田舎暮しのスローライフには当てはまらないという田村さんの生活ですが、そこには西条市という土地ならではのポテンシャルの高さが大きく影響しているようです。

25歳で社長に。新しい挑戦に”チャンス”を与えてくれる西条市という街

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地方移住先として多くの若者に選ばれている愛媛県西条市。25歳という若さで社長という立場を手に入れられる西条市のポテンシャルについて、田村さんの視点から語ってくれました。

「西条のポテンシャルはすごいですよね。目に見える自然資源が全国のどこと比べても本当に豊富です。それに結構人口が多くて、西条の中だけでもそれなりにビジネスをやっていけるっていうのもポテンシャルの高さだと思います。」

「あと、挑戦のしやすさ。西条はイメージ的にポテンシャルはあるものの、それが有効に使えてないというのは、やはり皆誰しもが思っています。だからこそ新しい人が来た時に、最初から”ポテンシャルを活かしてくれる人が来た”という風な視点で見てくれる感じがあります。」

田村さんが見出した、限界集落が持つ魅力。地元住民の中には、西条市ならではの魅力を認知しつつも、それを活かしきれていないと考える人も多いそう。西条市では、周囲の人も移住者の挑戦に理解を示し、協力してくれるという空気があるようです。

「西条では想像以上に人と人とを繋いでくれる人が多いというか。積極的に横の繋がりを繋げてくるところがあって、そこがすごいなと思います。それが、昔から西条で商売をやってた人たちの集まりっていうのもあるんですかね。横の繋がりがどんどん繋がっていくのがすごくやりやすいですね。あの人もあの人も知り合いっていう。」

”良い街の条件”が揃っている西条市。これらが、全国の若者世代が西条市に集まる大きな理由のひとつと言えるのではないでしょうか。

西条市にある資源などのポテンシャルを最大限に活かし、大好きな自然と暮らす。田村さんは、現在行っている3つの事業と新しい仲間集めによって、人と自然に調和の取れた集落に発展させていきます。

(取材協力)

ー石鎚ふれあいの里ー