西条市の未来を見据えて活動を続ける、地域の総合プロデューサー

仕事やプライベートに限らず、あらゆる場面で訪れる”人との出会い”。出会いは、自身の方向性や考え方に大きく影響し、出会いそのものが人生のターニングポイントになる事すらあります。

愛媛県西条市で「酒ダイニング・つじ丸」を経営する曽我部数也(そがべ かずや)さんは、出会いを大切にしながら前進し続ける経営者のひとりです。現在、新型コロナウイルス感染症によって大打撃を受けている飲食業界。曽我部さんはその厳しい状況の中、国内外で活躍を続ける経営者仲間に刺激を受けつつ、自らの活動に奮闘しています。そんな曽我部さんに、現在行っていることやこれまでの軌跡、そして地元・西条市に対して感じることや今後の展望などについて伺いました。

”先見の明”を持って、地元で多彩な活動を続ける

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西条産の食材を通じて、お客様に笑顔になってもらいたい。

曽我部さんは、美味しく信頼のできる食材を使用するカフェダイニングと、地元の魚やお酒を提供するこだわりの居酒屋を経営しています。まずは、現在行っている活動について伺いました。

「基本は飲食事業を行いつつ、市内の中学校の講師活動もしています。市内の中学校を回らせていただいて、学生たちと交流を持ちます。うちのお店で色々な職業体験をしていただくという活動と、高校などの家庭科のお手伝いもしています。」

ただ単純に学生たちに職業体験をしてもらうというだけではなく、学生たちが社会に出た時に役立つ考え方も教えているそう。

「学生たちに、社会に出るとどうなるか?ということで、調理を普通にするだけでなく、商売の感覚も養ってもらっています。必ず利益を発生させる為には、コストをどのように計算するのかというのを教えています。」

学生時代にはなかなか教わることができない、経営に関する知識。曽我部さんは、学生たちの将来を考えながら講師活動に取り組んでいます。これら以外にも、地域と協力してスイーツ店を出店することに取り組んでいましたが、昨今の”コロナショック”でその計画が現在ストップしているそう。

「いろいろとやってますね。新型コロナの影響が大きかったこともあり、飲食店は厳しい状況に置かれています。今は個人的に、電気関係や空調清掃の資格を取得して、需要の高い飲食店の室内エアコンの清掃や空調の取り外しも仕事として行っています。」

コロナの影響が大きかったという曽我部さん。国内外で活動を続ける飲食店経営の仲間に刺激を受け、自らの活動に力を注いでいます。

お客様に”ありがとう”と言われる仕事がしたい

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そんな曽我部さんは西条市のご出身。

「地元である西条市丹原地区の中学校、高校に入学しました。野球をやっていたんですが、もともとはプロ野球選手なりたかったんです。飲食業に携わる原点には、会社経営をしていた祖父の飲食店での振舞いにありました。」

「祖父がよく連れて行ってくれたお寿司屋さんで、祖父はお金を払う時にはいつも”ありがとう”と言っていました。普通は逆ですよね。お金をもらう側が”ありがとうございました”と言う。そんな祖父とお寿司屋さんのやり取りが、カッコいいなと思ったんです。」

「こういう仕事がしたいなと思いました。お客さんに”ありがとう”って言ってもらえるような。」

若い頃に経験した飲食店での祖父との思い出。曽我部さんはこの出来事を機に、調理師の道を歩むことを決意したそうです。その後、大阪の辻調理師専門学校で洋食を学び、一流ホテルに務めることになる曽我部さん。

「大阪に本社があるリーガロイヤルホテルでキャリアをスタートしました。数年はフレンチ料理に携わっていましたが、新居浜のリーガロイヤルホテルで人が足りなかったということもあり、職人さんと一緒に帰ることになったんです。」

”何でもやってみる”という柔らかさと、”こだわりを持つ”という考えの持ち主であったという職人さんが示してくれた道。そんなお世話になった職人さんの意見もあり、曽我部さんはその後、当時何もなかったという場所に将来の集客を見越して居酒屋をオープンさせることになります。

「この居酒屋は、元々創業がちょうど10年前の2010年立ち上げです。24歳のときに居酒屋ベースで始めました。本当に何もない場所です。お世話になった方の意見を参考に、オープンを決意しました。そして、4年前にカフェをオープンしました。」

24歳という若い時期に、居酒屋として地元の西条市で独立を果たした曽我部さん。その後にダイニングカフェをオープンし、現在の経営スタイルに至ることになります。

培った経験とアイデアで、地域の隠れたニーズを満たす

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地元のものだけを食べることができる飲食店は多くありません。

曽我部さんの飲食店では、来るお客さんをもてなすために地元産にこだわった料理を提供しています。

「お店に来られるお客さんは、県内だけでなく県外や海外の方も多いので、それなら西条の食材を使おうということになりました。カフェの方に関しては、ほぼ西条産です。お肉も卵も、なるべく西条で採れたものを使います。」

地産地消をコンセプトに、多くのお客さんをもてなす曽我部さん。それだけに留まらず、地元が求めるニーズを満たす活動も行っています。その活動の一つが、ダイニングカフェで行うウエディングプランです。

「ホテル出身の職人さんによって、宴会料理もできます。飲み放題なども入ったリーズナブルなプランにしてお客さんからお金を預かり、残りはご祝儀にしたらどうですか?という形でウエディングプランをプロデュースしていますね。」

西条市になかったサービスを次々に展開し提供する発想力と行動力。曽我部さんは飲食経営に留まることなく、様々な活動も活発に行っています。

地元への恩返しが、地域を盛り上げる

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定期的に講師として学校を訪れる曽我部さんですが、自分よりも若い世代と触れ合うことでインスピレーションが刺激されると言います。カフェ運営を任せている、有名ホテルの板前出身の若いスタッフさんからも、畑違いの職人として様々な意見やアイデアを聞き、積極的に取り入れているとのこと。

加えて、商工会の役員や飲食店の組合である料飲協会の会長も勤め、大規模イベントにも携わるという多彩な活動を行っています。

「商工会の役員もやらせてもらっているんですが、面白い企画も行っています。5,000人規模のクラシックカーイベントも行いました。」

西日本でも最大級のイベントまで手掛ける曽我部さんは、まさに地域の総合プロデューサーというべき存在。”貰ったものはしっかりと返す”という信念を持つ曽我部さん。”お世話になった地元に、お返しをする”というコンセプトを元に、地元を盛り上げる多彩な活動を展開しています。

移住者にとって、西条市の”素材”が最大の魅力

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地元への恩返し、そして人との付き合いが大切という曽我部さん。都会に比べて絶対的に人口が少ない西条市において、お客さんにお店に来てもらうためには、地元の人々を味方につけることこそが大事だと語ります。

「田舎は限界があると言われますが、田舎だからこそ時間をかければ都会よりできると思うんです。田舎は味方につけたら本当に強いですからね。」

今年、若者が住みたい田舎ランキングで見事1位を獲得した西条市。曽我部さんに地元の魅力を伺いました。

「移住者の人にとっては住みやすい場所ですね。この地域は田舎ですが、まだそこまで田舎ではないし、もうコンビニが何キロ先までないということもありません。」

「西条市は、農業経営耕地面積が四国1位。工業関係もダントツで四国1位ですよね。ここにはベースがありますし、物資はありますし、産業もあります。やはり何が無いかというとライフラインですかね。」

西条市の問題として、他県を繋ぐ交通手段が不便であるという点を語ってくれました。また、西条市の魅力として、”素材”の良さを挙げてくれました。

「やはり水などの素材や良い環境が魅力なのではないでしょうか。農業をするにもそれだけ広大な敷地がある分、自分で取り組むこともできる。人生設計はしやすいですね。」

都会にはない魅力を兼ね備える西条市。地方都市ならではの問題点はありますが、それを凌駕する素材や環境の良さを兼ね備えていると言えそうです。

将来は、西条市の若い世代に”形”を残したい

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西条市にはもっともっと魅力があるという曽我部さん。ご自身の将来については、どのような考えを持っているのでしょうか。

「僕は、自分がやるべきことをやり、今のお店を従業員たちに譲渡するなりして、”自分たちでやってみれば?”という形を残していきたいんですよ。」

若い世代に、自ら作り上げたビジネスを土台に挑戦してほしい。その想いは、新たな世代が西条市を盛り上げていく連鎖を生み出します。西条市の未来を考える一方で、曽我部さん自身は、50歳以降の人生設計を語ってくれました。

「50歳になったら従業員は構えず、小さな焼き鳥屋さんのように自分だけで経営できるお店をしたいと考えています。毎日、何もせずにだらだらとなってしまったら、面白くないですからね。」

気軽に飲食ができる焼き鳥屋のような店舗の他にも、色々と計画を練っているそうです。地域に根ざし、エネルギッシュに活動を続ける曽我部さんは、西条市をさらに盛り上げる活動を続けています。

(取材協力)

-酒ダイニングつじ丸-