会社員、フリーランス、無拠点生活を経て、おばあちゃん家にUターン。

東京で建築デザインや不動産の運営・企画に携わった経験を活かし、現在は愛媛県西条市に移住し様々な商品開発を通して地域活性化に取り組む山中裕加(やまなか ゆか)さん。

そんな山中さんは今、貴重な資源として過去に活用されていた「竹林」や「人工林」「棚田」などが再び資源として活用される豊かな地域作りを目指し活動されています。

西条市の文化資源を活用したイベントを開催するなど、日々忙しく活動する山中さんに、「若者世代が住みたい田舎ランキング」で全国1位を獲得した西条市のことや、地方で仕事をするメリット、今後手掛けたい事業の話などを伺いました。

東京を出て佐渡島、そして”西条”へ・・・2つのステップを経てUターン移住

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「私の場合は移住するまでに2ステップくらい踏んでいて、東京で独立して自由に動き始めた時、地方移住するなんていうことは考えていませんでした。」

もともと山中さんは5年間勤めた東京の会社を退職後、狭くなった視野を広げるためにこれまで何度か訪れていたニュージーランドへの海外移住を考えていたそう。

地方に興味をもつようになったのは、会社員時代に携わった移住促進事業で、実際に地方の方々とお話をしたことがきっかけだったようです。

「当時、消滅可能性都市と呼ばれていた神奈川県三浦市の移住促進事業に携わったことで、徐々に地方に興味を持ち始めました。」

『海外移住するタイミングではないような気がする…。日本のほうがもっと面白いのでは?』という漠然とした想いが生まれたそうです。

ただ、いきなり東京を離れて地方に拠点を移すということは考えておらず、東京の会社と業務委託契約を結んだ上で会社を退職。その後はフリーランスとしての活動を開始することになります。

委託の業務は必ずしも毎回の出社が必要な内容ではなかったため、その後1年間は東京と地方を行き来する生活を始めたとのこと。しかし、フリーランスという業務形態が山中さんの心境をさらに変化させていきます。

「フリーランスって自由になれるようなイメージがありますけど、やっぱり受託である以上、私の思い通りにならないこともたくさんあるなと思い始めて…(笑)自分で面白いと思うことをしっかりと事業化するような、地に足つけて仕事を回していくようなことをやりたいなと思って、友人の住む佐渡島に何度か足を運ぶようになりました。」

その後、佐渡島で物件を見て回り、佐渡について調べていくことで、拠点を持つことの必要性を感じ始めたそうです。

「一度どこかにしっかり軸足を置いてやらなきゃいけないな…と思い始めました。そんな中で本当に佐渡で良いのだろうかと考えて。これまで巡った地域と比較して、結果的に西条に移住しました。”おばあちゃん家”があったのも大きいですね。」

幼い頃の記憶が呼び寄せた西条市の「お婆ちゃんの家」

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出身は愛媛県松山市という山中さん。

「松山に帰るっていう選択肢はほぼ無くて、帰るなら西条のお婆ちゃんの家!っていう感じでした。佐渡もすごく良かったんですが、自分で地に足つけて何かをやる時に、どこでやろうかな?と考えたら、祖母の家が頭の中にすっと浮かびました。」

生まれ育ったのは松山市ですが、帰る場所はお婆ちゃんの家というイメージが強かったようです。その理由として山中さんは、過去の記憶が大きいと言います。

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「お婆ちゃんの家がある西条市を選んだ理由として、小さい頃に遊んだ記憶は結構大きかったかもしれないですね。」

幼い頃に遊びまわって感じた集落の豊かさと美しさは、山中さんの原点ともなる心の情景なのでしょう。

「今はお婆ちゃんの家がある集落は10世帯くらいしかなくて。だんだん景色が変化しているのはずっと気になってたし、田舎といえば私はおばあちゃん家っていうのが潜在意識にありました。西条はどうなっていくのだろう…と思って。」

過去に比べ、目に見えて分かるほどの衰退ぶりが気がかりだったことも移住の理由にあるようです。

また、様々な分野で活動するメンバーによって構成され、地域社会と交わりながら起業を目指す”※NCL西条”の存在も魅力的に映ったんだそう。

遠い記憶が呼び寄せた「お婆ちゃんの家」を拠点に、山中さんの新しい生活が始まったのです。

NCL西条(Next Commons Lab西条)とは

「地域おこし協力隊制度」を起業支援に特化した制度として活用し、新たな産業創出を目指す団体。山中さんはこの制度を利用してUターンを実現した。

若者にとって”自然の生態系”や”農作物”の豊かさが魅力的な西条市

2020年版 住みたい田舎ベストランキング」(田舎暮らし調査)において、若者世代が住みたい田舎部門で全国1位を獲得した西条市。

土地に馴染みのある山中さんご自身は、西条市がランキング1位を獲得したことについて、「素朴になぜ1位になったのかと思う」というのが正直な感想のようです。

西条市にUターン移住をした山中さんは他県から拠点を移したものの、幼い頃から馴染み深い場所で地元のような感覚もあるため、”西条市に対して県外の人が見るような視点”は薄いと言います。

では、山中さんが思う西条の良い所はどんなポイントになるのでしょうか。

「他県から移住した人の話を聞いていて”なるほど”と思うのは、やはり自然資源の豊かさ。そして、1年を通して色んな農作物が採れるというのは魅力的なことなんだと再認識していますね。」

一定の街並みを抜けると、すぐ山や川、海といった自然資源にアクセスできるというダイナミックさがこのまちの豊かさ表しているとともに、県外からの移住者を驚かせるポイントでもあるようです。

「他の地域に知り合いは居たのですが、西条を選んだ理由は、こういう地域が良いという”地域に対する理想像”より”人”だったかもしれないですね。全く知らない土地ではまず情報にアクセスすることが難しいですから。そういう情報っていうのは地方では特に、人から人に伝わっていくと思っています。そういう意味で、ネクストコモンズラボの仕組みは魅力的に映りました。何かをやろうとして集まっている人が少なくとも10人は居て、行政との繋がりも出来そうでしたから。」

何かを自分でやりたいと思う人にとって、最短距離で実現できる手段が豊富なところも西条市の良いところのようです。

「掘り下げれば課題は沢山ある」西条に必要な人材とは?

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Uターン移住後、精力的な活動を続ける山中さんですが、今の西条市には現実的な問題があると感じているそうです。

「私の目線では、クリエイティブ系の人材は圧倒的に足りてないと思います。」

西条市にはデザインや広告の制作を依頼できるクリエイティブ人材が足りていないとのこと。

デザインの本質である”伝えたいこと”に対して、双方の理解や熱意、技術を通して成り立つデザイン業務。身の回りに仕事を依頼できるデザイナーが少ないと言い、どうすれば良いかずっと考えていることも告白してくれました。

また、課題が業務として明確になって流通している都会とは違い、掘り下げることで課題を見出して仕事に結びつけていく地方に対して、

「規模の大きな起業でなくても、自分で地方の課題を見つけて事業化したり、事業や課題解決の全体像を描ける人が居ても良いと思う。」

という意見も。

その他、西条市のような地方にフィットする人材として、例えば「デザインと農業に関する専門知識」「ライティングと自然環境に関する専門知識」というような、2つ以上のスキルを持つ人なら活躍の場があるのではと語ってくれました。

移住者ならではの、人と地域を巻き込むアプローチ

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インタビューにも常に明るく朗らかに、そして愛情深く西条市やご自身について語ってくれた山中さん。

現在は、豊かな地域資源でもある放置竹林や人工林を利用して商品化を行うなど、商品開発事業がメインミッションとなっていますが、商品開発だけではなく色々な方法を使って、人と人、人と地域を結び、西条市の魅力を伝える事業を展開していきたいとのこと。

「今、都会は新型コロナウイルスの影響で外出が制限されているじゃないですか。一方フリーランスで業務を請負っている人の中にはいつ契約を切られてもおかしくないという声も聞きます。だから是非この機会に、そのような方々を巻き込みたいですね。(笑)私が西条からそんな人達に向けて情報を発信して、共同で西条のプロジェクトを進めることで地域の課題解決にも繋げていきたいと考えています。」

山中さんは最後に、地域側の課題や資源を深掘りして丁寧に可視化できるのは西条に住んでいるからこそで、その役割が実は今の地域に欠けているピースであって、そのピースを埋めることが私たちの役目でもあるのではと語ってくれました。

西条市でますます精力的に事業を行う山中さん。今後の動向と活躍から目が離せません。

 

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