「地域おこし協力隊」で見つけた暮らしの中の喜び

愛媛県で地域おこし協力隊として活躍する山下優子(やました ゆうこ)さんは滋賀県出身。異文化や自然農法に興味を持ち自由に旅をするのが好きという山下さんは現在、社会人として勤め上げた経験を経て、新居浜市の別子地区で農業に携わっています。とくにゆかりのない愛媛県への移住ですが、移住後は人々とのふれあいが何より楽しいと言います。山下さんが愛媛への移住に至ったこれまでの経緯や愛媛県に決めた理由、変化した考え方や新居浜市での暮らしについて伺いました。

奔放な想いを支える営業経験

y-yamashita02

地域の地場産品や地域ブランドの開発・PR・販売に従事する意欲ある人材を都市部から招き入れ、定住・定着によって地域力の強化・維持を図る目的で設立された地域おこし協力隊。受け入れ側の自治体と隊員数は年々増加傾向にあり、隊員にとっても地方と関わる良い機会となっています。山下さんは様々な経験を経て、2020年8月から地域おこし協力隊として新居浜市に移住し、活動を開始しました。

山下さん:簡単に経歴を話しますと、新卒で入社した営業会社に4年間勤めまして、そこから海外へ行きたいなと考えました。新居浜に来るまでの5年間ほどは、アルバイトをしながら海外や国内で気の向くままに放浪したりと、そんな生活を送っていました。

幼い頃から英語に親しみ、海外の異文化に興味を強く惹かれていたという山下さん。より自由に好きなことをしたいという奔放な想いは、営業での経験や知識に支えられています。

山下さん:基礎的な土台の部分は、営業会社で全部磨かれたと思います。コミュニケーション能力や物怖じせずに飛び込んでいく力。あとはやっぱりメンタル面が強くなったのも大きいですね。

地域おこし協力隊に応募する前は、ワーキングホリデー制度を利用して海外へ移住しようとも考えていたという山下さんでしたが、昨今の新型コロナ感染拡大もあり、断念せざるを得ない状況に。そんな中、かつて訪れた愛媛県の地域おこし協力隊の募集が目に止まります。

縁のあった愛媛で、旅をするように暮らす

y-yamashita03

勤め先を退職した後、滋賀の実家を拠点に国内外と旅を続けていた山下さんは、その時に初めて愛媛県に訪れます。

山下さん:愛媛はあてもなく四国行ってみようかな、くらいの軽い気持ちで訪れたのが最初でした。人との繋がりがきっかけになったこともあって、四国に気になるゲストハウスがあるから今度一緒に行こう、という感じで訪れたんです。

旅人が集まるゲストハウスでは、地域の人々と触れ合えることがひとつの魅力。松山市のとあるゲストハウスを訪れた山下さんは、愛媛県の人々に好印象を抱きます。

山下さん:5年前に初めて松山のゲストハウスを訪れました。コミュニティでたくさんの人と話す機会がありましたが、四国内でも愛媛県の人は違っていて、すごく合うなと思ったんです。

人との縁で愛媛県に訪れたという山下さんですが、愛媛への移住もまた”人”がひとつの決め手。地域おこし協力隊として移住することで、それまでの生活スタイルを一変させた山下さんですが、生活を送る感覚は変わらないと言います。

山下さん:割と以前と同じ感覚でいます。現在の拠点は新居浜ですが、私の目指している働き方はいろんな人に会ったり、いろんな場所へ行き、仕事を新居浜でやるっていうスタイルですので、そういう意味では日々旅をする感覚で過ごしているのかなとは思いますね。

協調性が大切。柔軟な姿勢で地域の人々と接する

y-yamashita04

地域で農業に専念する環境が整っているという地域おこし協力隊。山下さんが携わる業務は多岐にわたります。

山下さん:地域おこし協力隊では職員として任用されています。活動ミッションというものがみんなあって、それをメインに行いつつ他の業務も一緒にやっていくって感じですね。私の場合は農業ミッションで野菜を作って販売するというものです。他には、地域が取り組む”媛っこ地鶏”と”メイプルリーフ”の栽培、”朝鮮人参の栽培”と三つの柱があって、他の人たちはそれをミッションに活動しています。

もともとは有機栽培やオーガニック農法に興味を持ち、それを理想として農業に関わるようになった山下さん。しかし現地の人々と調和しながら農業に携わる中で、現実の状況を加味しながら柔軟にその考え方を変化させてきました。

山下さん:そこまで有機栽培や自然農法に縛られずにいたほうが、動きやすいんじゃないかと考えています。その土地ならではの気候に合わせたやり方とか土の質は、地域の今までやってきた人に聞いてみないと分かりません。絶対に有機栽培で進めようとなると、現地の人との関係構築も難しいものがあります。自分だけ尖らずに農業に携わったほうが暮らしやすいのではと私は思います。

これまで古い農法で農業を進めてきた地域で、新しい農法や新しい考え方を無理に推し進めるのではなく、地域の人々との協調性を大切にしながら進めていくことで、お互いを理解していくことに繋がっているようです。

地域の人との繋がりが楽しいし、有り難い

山下さんが暮らす場所は山の上で、コンビニまでは下山して1時間ほどかかる場所。しかし今では、新居浜は暮らしやすく大好きな場所と語ってくれています。

山下さん:コンビニが家から遠い分、たまに人が家に来てコンビニのお菓子をくれたりします。その時、すごくその有り難みが分かって、なんか楽しいんです。野菜は結構もらえるのでほぼ買わないですし、必要なものはたまに市街地、農園視察などの仕事のついでに買ってきたり出来るので、本当に苦労はしてないですね。

また農業の仕事に限らず、消防団やバトミントン、バレーボールなどの活動にも参加し精力的に活動する山下さん。仕事の悩みなどを相談できる協力隊のネットワークもあり、今までの暮らしにはなかった暮らしやすさを感じているそう。

山下さん:最近ですが、人との繋がりが感じられるようになって、ようやく肩の荷が下りたというか。人と出会って、挨拶の後にオープンに喋れる気持ちになれたので、ちょっとずつ受け入れてもらえてきているかなっていうのは感じます。

人が心を開いてくれる瞬間がすごく好きで、営業職時代の感覚に似ている気がします。心を開いてもらうには、まず自分が心を開かないと絶対無理だと思っていて、最近それができてるので楽しいなっていうのはありますね。

異文化や自然農法に興味を持ち、気の向くままに旅を続けてきた山下さんは、新居浜市という新しい土地に根付くことで、これまでの暮らしには無かった有り難みや楽しさを発見しました。柔軟な姿勢で仕事に取り組む山下さんのこれからの活動が楽しみです。

 

(取材協力)

新居浜市地域おこし協力隊